写真で見る事例報告

・ご家族から掲載の許可をいただきました。
・図は添付ビデオの映像をキャプチャーしたものです。
・ダウン症を脳障害にくくることには議論があるだろうと思います。当室は学習上困難を抱えるお子さんとして相談・プログラム指導を承っています。

ファーストレクチャー

 一般に、ダウン症のお子さんは筋緊張が弱く、移動運動の発達が遅れます。小さなお子さんは移動運動の発達とともに世界を広げていきますから、それは認知や社会性などにも影響する重要な課題です。
 Sくんのご両親は「早期の療育の必要性を感じています」ということで来室されました。ファーストレクチャーの最後に「(もしプログラムに取り組むということであれば)一日も早く歩けるようになって、子どもの集団に入れるようになることを目指しましょう」と提言しました。

初回評価(06年1月、1歳01ヶ月)

Sくん(04年12月生まれ)
医学的診断:ダウン症(21トリソミー、標準型) 右耳は高度難聴、中程度の乱視あり、重篤な合併症は特になし
 両手両足を同時に動かして、短い距離を腹這いで移動できます(図1)。座位はほぼ安定していますが、自分からお座りになることはできません。立位をとらせるとまだちょっと危なっかしいです。やはり移動運動全体にパワー不足を感じます。


               図1

 プログラムは補助付き腹這いを活用する腹這い+障害物、そして頭上ばしご1(ステップ1)としました。また、ものまね(一発芸)とビッツを加えました。

第1期中間報告(06年4月、1歳03ヶ月)

 ダウンのお子さんの学習能力は高いです。3ヶ月間一日も休まないというご家族の努力もすばらしい。プログラムはどんどん進展しました。障害物2の越え方ができるようになり(図2)、頭上ばしごでは体幹への援助が必要ですが、手と足は自分で出せるようになりました(図3)。


               図2


               図3

第1期再評価(06年8月、1歳07ヶ月)

 頭上ばしごは一日100トリップを越え、完全に自力でできるようになりました(図4)。歩行のプログラム1(壁立ちから歩き)を開始しました。6月下旬始歩、報告時にはベスト5歩で1日の総歩数は100歩を超えました(図5)。日常生活では高這いを始め、つかまり立ち、伝い歩きをよくするようになりました。


               図4


               図5

 8月は避暑とご家族のリフレッシュのためにハネムーンを取りました。歩きのめども立ちましたし、ちょうどよいタイミングだったと思います。お休み中は記録のことは忘れて、高這いでたくさん遊ぶようにアドバイスしました。

第2期中間報告(06年11月、1歳11ヶ月)

 外を歩くことは室内よりずっと刺激的で楽しいです。9月中旬から転倒防止ヒモを付けて外歩きを開始し、下旬には一つの目安である一日1,6kmを達成しました(図6)。歩き始めのお子さんは必ず手をこのように上げて歩きます。何度見ても興味深いですね。
 今後は走りを目指して「歩け、歩け」です。


               図6

 ことばについては「独自のことばでしゃべっています。二語文かなと思うこともあります。時々家族以外にも通じます」との報告でした。言語については当初から「いずれお話しするようになるでしょうが、構音の問題が生じる可能性が高いです。音声言語にこだわることはよい考えだと思いません。ジェスチャーやサインを交えた『同時法』でコミュニケーションを充実させることが、音声言語の発達のためにも、ベターだと思います」とお話しし、その方針で指導してきました。チェックリストも言語はひとまず棚に上げて認知に力を注いでいただきました。

第2期再評価(06年3月、2歳03ヶ月)

 寒さに負けずほとんど毎日1,6kmを歩き込みました。ベストタイムは38分でした。平坦な場所を歩行するときは手が下がるようになりました(未だ坂や砂利道などでは上がります)(図7)。声をかけると早足になって走ろうとする気持ちは十分感じます(笑)。クロスパターンで歩き走るには至っていませんが、意欲とスタミナはすばらしいと思います。


               図7

 認知のチェックリストは1歳代の課題はクリアし、2歳代の課題も半数ほど○がつきました。
 ビッツは漢字からひらがなへ進んでいます。記録表によれば「『み』で耳を触る」など手応えがあるようです。楽しむことを何よりも優先して、やがて読書へとつなげてください。また、文字が読めるようになることは将来の構音の練習に役立つだろうと思います。
 ご報告の中に「本人から同年代の子どもたちの中へ入っていってくれるようになった」、「私(母親)の視線が外に向いてきました。不安ばかりが大きかった6ヶ月前に比べて一歩を踏み出す準備が整ってきたように感じています(私もスタミナがついてきました)」とあります。
 今後は子どもの集団の中でたくさん遊びましょう。それは周りのお子さんにとってもよいことだろうと思います。卒業会員として折に触れSくんの活躍の様子をお知らせいただければ幸いです。本人とご家族へ心から敬意を表します。