写真で見る事例報告

・ご家族から掲載の許可をいただきました。
・図は添付ビデオの映像をキャプチャーしたものです。

 当室はホームページのなかで、「共働きであるが、できる範囲でプログラムをしたい。幼稚園や保育園へ通わせながら療育に取り組みたい。そうした多様なニーズにお応えします」とうたっています。私は、女性の社会進出は当然のことであると思いますし、一方の親が仕事を辞めて子どもの世話をしなければならないという社会的圧力があるとすればたいへん残念に思います。共働きの家族が取り組めるプログラムを探求することは当室の課題の1つです。
 しかし、「言うは易く行うは難し」です。時間的制約があることはもちろんですが、プレッシャーのないプログラムはあり得ないわけで、加重されるストレスを上手にやりくりしなければなりません。やっていくための必要条件の1つは、父親の主体的・積極的参加であろうと思います。

初回評価前の報告(01年5月)

Hくん(98年7月生まれ)
医学的診断:脳性マヒ
移動運動は「高這い、つかまり立ち、伝い歩きはできる。立位、歩行はできない」。
プログラムに期待することは「歩けるようになること。走れるようになること」であるが、フルタイムの共働き家庭であり「1日に30分から1時間程度で効果的なもの」という要望でした。
言語の発達は良好で、その方面の心配は必要なし。頭上ばしご中心のプログラムを開始しました。

第1期中間報告(01年8月)

3ヶ月間一日も休まずに、プログラムに取り組みました。所要時間は朝と晩を合わせて実質30分(休日は1時間)ですが、生活のリズムをつかむこと、Hくんのやる気を引き出すことに苦労しました。「嫌がってやらず」から始まった頭上ばしごは52トリップ(1トリップは約2m)できるようになりました。下図は開始当初の様子です。

第1期再評価前の報告(01年11月)

頭上ばしごの週計が一度も減ることなく161トリップから247トリップへ増えました。これは本当に称賛に値することです。ターンも自在になり、しっかり歩けています(下図)。
この6ヶ月間、プログラムを行って一番よかったことは「目標を持って一日一日取り組むことができました」であり、逆に悪かったことは「時間のゆとりがなくなった」です。

第2期中間報告(02年3月)

年末から装具、歩行器を使うようになりました(注)。頭上ばしごの週計は、二度ほど体調不良のときに一時的に落ちましたが、477トリップへ増えました。トリップ数が増えればどうしても時間がかかります。時間の節約のために2メートルのはしごを3つつなげました。部屋を縦断する長い頭上ばしごはすばらしい環境ですが、他の家族は慣れるまで何度か頭をぶつけたそうです(笑)。所要時間は実質1時間
(注)当室は装具を使用することを否定しません。子どもが歩きやすい方がよいと考えます。歩行器についても一概にはいえませんが、子どもの意識と生活を豊かにするものであるならば結構だと思います。ビデオ報告のなかに歩行器を使いながらサッカー遊びをするHくんの姿がありましたが、すてきなシーンでした。

第2期再評価前の報告(02年5月)

3月下旬、メールにて速報を頂戴しました。「昨夜、頭上ばしごの下で、数歩歩きました」
頭上ばしごは、週計695トリップへ伸びました(1日のベストは214トリップ)。室内での歩行は1日300歩を記録しました(下図)。

第3期中間報告(02年8月)

第3期からは外歩き(歩き3)がメインです。暑い時期ですから(買い物を兼ねて?)スーパーのなかを歩いています(下図)。床が少し滑りやすい難点がありますが、体温調節が不得意なお子さんにはよいアイディアです。

第3期再評価前の報告(02年11月)

1つの目安である1日1,6キロメートルの歩行を達成しました(120分)。室内での裸足の歩きにも取り組んでいます(左下図)。5月から頭上ばしごを再利用して運ていを開始しましたが、ほぼ自力でできるようになりました(右下図)。かっこいい!

 再評価時の話し合いにおいて、ご両親は
・最初の目標は達成した
・今後しばらくは現在の課題が継続するだろう
・両親の仕事が忙しくなり続行は困難である
という理由からプログラムを終了するとのことでした。私も妥当なお考えであると賛成しました。現在の歩きは移動運動の手段として十分であるといえませんが、今後保育園で友だちと元気に遊ぶことを通してもっとしっかり歩けるようになると思います。また、適切な時期に手術という選択肢もあるでしょう。
 卒業会員として末永くお付き合いいただくことをお約束してプログラムを「卒業」しました。プログラムの実施内容もすばらしかったが、「引き際」もまた見事であるなあと思います。
本人とご家族へ心から敬意を表します。